いきなり質問ですが、みなさんにとっての理想の旅とは、どんなものですか?
「どんな旅がしたいか」はその時々によって少しずつ変わるものだと思うで、これ!というものを一つ挙げるのはなかなか難しいかも知れませんが。。。
私は、「その街に暮らしを覗くような旅」をするのが結構好きです。
世界中の人がどんな毎日を送っているのか?ということにものすごく興味があるので、この街に住んだら、きっとこんな朝を迎えて、こんなものを食べて、こんなことを感じるんだろうなあ と想像しながら、街歩きするのが何よりも楽しい。
さて、イギリスの中で「暮らしを覗くように旅できる街ランキング」をするとしたら、第一位はやはりロンドン。ですが、その次に私が魅力的だと思っているのが、エジンバラ(Edinburgh)という街です。
イギリス北部、スコットランド地方における、ビジネス・政治・そして文化の中心ともいえる街。ロンドンから電車で5時間強、飛行機で1時間半程度の場所にあります。
エジンバラとは「エドウィンの城」を指します。「エドウィン」は、古いケルト系言語の、この地方の呼び方なんだとか。
さて、なんといってもこの街の一番の魅力は、ユネスコの世界遺産にも登録されている、その美しい味わい深い街並みです。
ロンドンと違って第二次大戦中に大規模な空襲を受けることがなかったため、昔ながらの街並みが残されている範囲が広いのも大きな特徴です。ヨーロッパにはたまに「旧市街」と呼ばれる区域以外は現代的な建物が立っているような街もあるのですが(大抵は戦争で古い建物が破壊されてしまったのが理由)、
エジンバラは、歩いても歩いても、昔ながらの建物や、石畳の道がずっと続いている。
また、火山の溶岩の上にできた街なので地盤が強固で、スピリチュアルな力が宿っている、とも言われています。
その言い伝えの通り、数々の神話や歴史上の物語が残る街で、歴史好き・物語好きな方には楽しみが尽きない街です。この話はまた別途詳しくさせてください。
とてもミステリアスな空気感を持った街でもあり、あのJKローリングがこの街のカフェの一角でハリーポッターを書き上げた、というのも肯けます。今にも街角から魔法使いが出てきそう。
さて、今回はメジャーな観光スポットのご紹介は置いておいて、「暮らしを覗けるような旅」のお話でした。
まず、暮らすように旅するには、やはりホテルではなく、AirBnBのような民泊システムを利用するのがおすすめです。そして、ここエジンバラでは観光地感が強すぎる旧市街地ではなく、新市街地にステイすることをおすすめします。(新市街地と言っても、18世紀頃に作られた町の区域なので、十分に雰囲気があります。ちなみに旧市街地は中世13世紀頃に作られた区域。そう、エジンバラの歴史は長いのです!)
8月末に夫と2人で訪れた際には、こんなに素敵なお部屋に宿泊しました。
めちゃくちゃ広いキッチンと、リビングと、ベッドルーム、バスタブ付きのバスルーム完備!でした。
天井が高くて、北欧家具とレトロな装飾とパリのアパルトマンが融合したようなインテリアがとても好みで最高に居心地が良かったのですが、それよりも感動したのが。。。
「エジンバラへようこそ!私たちが大好きなこの街の、お気に入りの過ごし方をご紹介します」
という、書き出しで始まる、置き手紙なんです。
とても長いので、一部省略しつつ、和訳してみると、こんな感じです。
「まず朝起きたら、近所の12 Trianglesというベーカリーで朝ごはんを買いましょう。おいしいコーヒーと、焼き立てのパンを買ってください。私たちのおすすめは、炭焼きサワードウブレッドと、レモン・リコッタドーナツです。そしてその足で、歩いて5分の場所にあるカールトンヒル(Carlton Hill) の丘に登って、360度見渡すことができる素晴らしい景色を堪能しつつ、先ほど買った焼き立てのパンとコーヒーを楽しんでください。晴れた日には、遠くのペントランドの丘(Pentland Hills)や、フォース湾がよく見えるでしょう。
さあ、いよいよ街に繰り出します。ブロートン・ストリート(Broughton Street) をブラブラするか、石畳の小道を歩きながら、ボタニックガーデン(Botanic Gardens)やインバーレイ公園(Inverleigh Park)を抜けて、ストックブリッジ(Stockbridge)を目指します。
ストックブリッジは私のお気に入りのエリアで、まるで小さな村のようにこじんまりしているのに、素敵な本屋さんやブティック、面白い雑貨屋さん、小さなワインバーなんかが沢山あって、日曜日にはファーマズ・マーケットも出ているんですよ。
さて、そろそろお腹が空いてきたでしょう、ランチは、ザ・パントリー(The Pantry)がおすすめ。地元で取れた食材を豊富に作ったおいしいメニューが盛り沢山です。
ランチの後は、ショッピングなどをしながら引き続き街歩きを楽しみましょう。情緒あふれる小径のサーカス・レーン(Circus Lane)を歩くのを忘れないで!足が疲れたら、夕飯前に一杯、食前酒でもいかが?周辺には、ラッキー・リカー(Lucky Liquor)など、遊び心のあふれたバーが沢山ありますよ。
夕食は、キャンドルライトの灯ったロマンチックなビストロなら、ザ・ボン・ヴィヴァント(The Bon Vivant)がおすすめ。タパススタイルのメニューです。それか、道の反対側にあるフィッシャーズ・イン・ザ・シティ(Fishers in the City)は、間違いなくエジンバラで一番おいしい海鮮料理が食べられる場所。新鮮なオイスターやロブスターが食べたければ、是非ここへ行ってみてください。パリに行った気分になりたければ、カフェ・サン・オノレ(Cafe St. Honore)も捨てがたいレストランです。どのメニューを頼んでもおいしいですよ。食後に毛一杯という人は、ス リットル・ストリート・バー(Thritle Street Bar)でスコッチウィスキーをお楽しみください。
それでは、“Slainte!”これは、ゲール語で、Cheers(乾杯)を意味する言葉です」
まさに!暮らしを覗くためのガイドともいえる内容ではありませんか。
このお手紙の横には、さらに近所のレストランなどの雑誌記事を切り貼りして作られたスクラップブックが置いてありました。
いや〜。この手紙を読んだだけで、エジンバラが益々好きになってしまうし、ワクワクしませんか?旅人に部屋を貸すだけではなくて、この街で素敵な時間を過ごしてほしい!という、家主の想いも伝わってきますよね。コロナ禍で、直接ゲストと会って話すことはできなくても、こんなおもてなしの仕方があるんだなぁと、しみじみ感動してしまいました。
機械的に有名な場所などを紹介するのではなくて、手紙を買いてくれた本人の個人的な「お気に入り」の想いが詰まっているからこそ、ワクワクさせられたんだと思います。映画「“>アメリ」の冒頭で登場人物が自分のお気に入りのものたちを紹介するような感じでしょうか。
皆さんもぜひ、エジンバラにいらしたら、観光スポットをめぐるだけでなく、このお手紙の内容を参考に、暮らしを味わうような時間を作ってみてくださいね。
実際には私たちも今回の旅では時間がなくて、カールトンヒルに登ってパンを食べるところまでしかできなかったので(爆)、次回エジンバラに足を運んだら、絶対に夜ご飯を食べるところまで体験してみたい!と思っています。
ちなみに、こちらがお手紙のおすすめに従って朝ごはんを買いに行ったパン屋です。
ぶっきらぼうなお兄ちゃんが1人で黙々とやっているパン屋で、手紙に書いてあったおすすめのリコッタ・レモン・ドーナッツを買おうと思いあるかどうか聞いてみたら、
「ドーナッツはやめたんだ。作るのが大変だから」とのこと。何ともスコットランド人らしい正直な回答です(笑)
代わりにおすすめだというバナナ・ピーナッツ・デニッシュと、ピスタチオ・イチジク・デニッシュ、そしてシナモンツイストを買ってみます。渡された紙袋から伝わるパンの焼き立てのほんのり温かい感触に、「あ、これ絶対美味しいやつ」と思いながら、カールトンヒルを駆け登り、結局待ちきれずに坂の途中でバナナ・ピーナッツ・デニッシュをひとかじりすると。。。
「何これ、うまあっ!!」と叫びたくなるほどのおいしさでした。サクッと軽いデニッシュに、熟したバナナのジャムと、甘くないピーナッツバターがのっていて、カルダモンのようなスパイスがほんのり香るという、絶妙なコンビネーション。
きっとこの街に住んでいたら、明日の朝もまた同じパン屋さんに行って、あのぶっきらぼうなお兄ちゃんに「あのバナナとピーナッツのデニッシュ、美味しかったよ!」と報告しながら、別の味を試してみているのかしら、なんて思いながら、あっという間に完食しました。
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今回の旅で、私も自分が好きな街の「お気に入りの過ごし方」をこんな形でまとめてみたいなと思うようになりました。
私だったら、海外ならロンドン、パリ、フィレンツェ、ウィーン、ニューヨーク、ミュンヘン、ホノルル、台湾、香港あたりを書きたいかな。
日本だったら、京都、丸の内、上野、根津、吉祥寺、表参道あたりですかね。
そして、「お気に入りの過ごし方」が思い浮かぶような街の数を、宝物を集めるように、少しずつ増やしていきたいものです。