今日は少しロンドントークから離れて、普段の仕事について少し書いてみたいと思います。
私は大学卒業後、いわゆる外資系金融機関の日本支社に新卒で入社して以来、ずっと同じ会社で働いてきました。いよいよ勤続年数も二桁となり、部署異動(営業→投資部門)やオフィスの転勤(東京→ロンドンの繰り返し)を挟んではいるものの、これほど長い間、同じ組織に所属し続けたことに自分でもびっくりしています。
良くも悪くも色眼鏡で見られることの多い「外資系」。
その実態は部署や会社によって様々だと思うので、一概に一括りにはできませんが、今回はあえて私が10年以上勤めてみて感じた、3つの魅力をご紹介してみたいと思います。
①自分でキャリアの手綱を握ることができる。
一番はこれに尽きます。外資系企業(特に金融)では、基本的に多くの日系企業に存在する「辞令」がありません。部署異動は基本的に挙手制。
部署に空きポストができると、社内公募が出ます。異動したい先の部署に空きポストが出たら、速やかにこれに応募し、履歴書を送って、面接。合格すれば異動成立です。つまり、自分が異動したい先の部署に「採りたい」と思ってもらえる人材であれるかどうかが全てなのです。
基本的に上司は、部下のこうした異動希望に関して、協力的であることが求められます。「本人の意思・能力と、採る側の部署のニーズが合致しているのであれば、会社全体として見れば能力が最適化するのでプラス。人が抜けてしまう側の部署は、空いたポストを埋めるためにまた募集をかければいい。」という考え方なのです。ですので各チームの責任者は、良い人材を自分のチームから流出させないために、部下のモチベーション維持に務めます。国を跨いだ異動・転勤も基本的には同じ流れは同じ。何なら、外資系間の転職も似たようなロジックで動いています。
常に自分のキャリアに責任を持ち、自分で道を切り開き続ければならないという点で、しんどさもあるのですが、この「しんどさ」は自由であることの裏返し。逆に、自分で道を切り開きさえすれば、自分の望む道に進むことができる可能性が高い ということです。個人的には「辞令」によって、自分の意思と関係なく携わる仕事や住む土地を変えざるを得ない状況に比べれば、割が良い話だと思います。
とはいえ、こうした環境の恩恵を受けるためには、普段から「こういう仕事がしたい」「こういう場所で働きたい」という自分の意思を上司を含む周囲にはっきりと伝えておく必要があります。これは本当に言ったもの勝ちです。そしてチャンスが巡ってきたらこれをすかさず掴むことができるだけの能力と人脈を築いておくこと。
入社してからの十数年、もちろんやりたくない仕事をしていた瞬間も沢山ありますし、楽しいことばかりではありませんでしたが、なんだかんだ、今は子どもの頃から夢見てきたサステナビリティに関する分野に携わり、働きたかった環境・住んでみたかった街で暮らすことができているので、この点はかなり会社に感謝しています。
次は、
②若いうちから活躍の場を持たせてもらえる という点。
外資系は日本企業と比べて圧倒的に社員数が少ないので、その分一人当たりに与えられる仕事量は多く責任も重くなりがちです。裏を返せば、その分若いうちから裁量を持たせてもううことができ、早い段階で貴重な経験を積むことができると言えます。
経験のない人間に対して「一人前になるまで待とう」ではなく、「とりあえずやらせてみよう。それで失敗したらまた考えよう」と会社がある程度リスクをとってくれるので(人が少ないのでそうしないと回らないというのが実情)、結果的に早く成長できる環境が整っているのではないかと思います。
そして最後は、
③自分も同僚も「プロ意識」を持って仕事している という点。
もちろん日系の会社にも、プロ意識を持って仕事をしていらっしゃる方々は沢山いらっしゃいます。外資系の最大の特徴は、「プロ意識を持っていなければ、生き残ることができない」というシビアさの度合いです。私自身、新入社員の頃から「うちの会社は、プロ集団だから、結果が出ればそれなりの報酬を払うし、成績が出なかったら戦力外通告する。それがプロとアマチュアの違い。プロのスポーツ選手や音楽家と同じと心得よ」とシニアマネジメントから脅され叩き込まれ続けてきました。
ですので、いわゆる窓際族が長く会社に残っていることは稀。結果が全てなので、無駄な会議、無駄なプロセス、ミスマッチな人材(!)は自然淘汰されていきます。
これは一見非情なようで、健全なことだと思います。逆に社員は自ずと自分と自分のチームが出せる結果に集中することになるので、「人からどう見られるか」を気にしすぎる必要がなく(故に変人も多い)、妙な忖度や足の引っ張り合いをしている暇もない(全くないわけではありませんが)といった、比較的風通しが良い風土が生まれるからです。
外資系で生き残るためには「周りを蹴落としてでものし上がってやる」精神が必要であると言っているわけではありません。これはむしろ逆で、自分の貢献度(コンサル的に言えば、自分のバリュー)に集中するということです。あくまで自分のペースを大切にして、自分の強みを活かすことに集中することが大切。私自身どちらかというと全くバリキャリ志向ではなく(内定が決まった時は周りに非常に意外がられました)、マイペースに肩の力を抜いてやってきたので、続いているんだと思います。でないと、身も心も持ちません。
いかがでしたでしょうか。
もし今就活や転職活動をされていて、外資系に行くべきか?悩んでいる方がいらっしゃれば、一つのご参考になれば幸いです。
今週もあと1日で週末ですね。どうぞ良い金曜日をお過ごしください。