外資流仕事術 ROI(投資利益率)を常に意識する

私の職場でよく使われる考え方の一つに、投資収益率=ROI (Return on Investment)があります。

ROIとは、投資した資本(お金や時間)に対していくらリターンを得られるか のことで、基本的には 利益÷投資額×100% で計算されます。

より身近な言葉に置き換えると、「費用対効果」みたいなものですね。

金融の世界では、不動産や金融商品に関する投資判断を行う際には必ずROI系の様々な指標を使って投資効率を測るのですが(IRR(内部収益率)とか、ROE(自己資本利益率)とかROA(純資産利益率)とか、少しずつ姿を変えて出てきますが、ここではそこには立ち入りません!)

これは投資判断や経営者としてのビジネス判断に限らず、個人レベルの仕事の進め方においても、有効な判断軸になる思いますので、今回は私がこの考え方を普段の仕事にどのように適用しているかについてご紹介してみます。

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それはシンプルに、その仕事に投下されている資本、すなわち、「その仕事をやる人の①時給と②強み」を意識すること です。

「その仕事をやる人の時給を意識する」とは?

何だか世知辛い考え方のように思われるかもしれませんが、これは、仕事相手の時間の価値を常に尊重することにつながります。

時給換算の視点を持つことで、「この仕事にどれだけ時間をかける必要があるか」「この案件は、上司に質問すべきことか」「この資料作成は部下に頼んでしまってよいものか」などがクリアに判断できるようになるのです。

例えば、上司が自分より3倍の給料を稼いでいるとします。これは、当たり前ですが、自分の1時間と、上司の1時間のコストには、3倍の差がある ということです。つまり、上司が1時間かけて何かをやる結果と、自分が2時間かけて何かをやる結果が同じなのであれば、自分が2時間かけたほうが、会社としては安上がり ということになります。特に同じ会社で働いていても能力・立場によってかなり時給に差が出る外資系企業では、仕事相手の時間の価値を常に意識して仕事する必要があるのです。

たまに重要なミーティングで「今、それをここで聞くか?」というような質問をする人がいますが、こういう人は相手の時間の価値を理解できていない、または理解していても尊重していない証拠、と見做されてしまうので、要注意です。質問をすること自体は良いことですが、自分より時給が高い人が大勢いる場所で、自分で調べれば5分で分かるような類いの質問をすることは、大変なコストの無駄遣いになりかねません。

逆に、先ほどの例で、自分が3倍の時間をかけても解決できないであろう問題に直面したら、すぐに上司に助けを求めるべきということになります。上司に10分相談して一瞬で結論が出るなら、自力で解決しようとして1日中頭を悩ますのは時間の無駄。上司に早い段階で相談するのが得策でしょう。

また、自分がある程度経験を積んできたら、「新人でもできる仕事を自分ではやるべきではない」ということにもなります。新人と比べて倍以上の給料を稼いでいるのであれば、自分がやれば30分で済む仕事とわかっていても、新人に1時間かけてその仕事をやらせて、自分はよりリターンの高い仕事をやることが、チーム全体の実績を伸ばすことになるのですジュニアでもできるような仕事はどんどん下に任せて、自分がやるべき仕事に集中することが重要です。

「その仕事をやる人の強みを意識する」とは?

外資系企業では「ジェネラリスト」を養成するための定期的なローテーションがなく、基本的に「その道のプロ」を採用・育成しようとしています。そして、「何事もその分野が一番得意な人に任せよう」という力が働いています。

なぜなら、シンプルにその方が効率が良いからです。

ですので、チームで何かプロジェクトを回すことになった際は、チームメイト一人一人が一番強みを発揮できそうな役割分担を心がけます。これは、スポーツなどでは当たり前のことで、サッカーでもラグビーでも野球でも、基本的に得意分野によってポジションはあらかじめ決まっていますよね。

しかし意外とオフィスワークになると「このデータ分析はみんなで手分けしよう」とか「みんな平等にプレゼンの機会が回ってくるようにしよう」などと妙な「苦労の分かち合い」をしてしまって、チーム内のポジショニングが非常に曖昧になってしまう傾向があるように思います。

真のチームワークとは、みんなが同じことをすることではなく、一人一人がお互いの強みを活かし合うことだと思うのです。

そして、普段から周りに「これは自分が得意だ!」(楽しい!苦でない!)と自分の得意分野について知ってもらう努力をすることも、自分がより強みを活かせるような環境を作るためには大事です。すると自然と周りが「これはあいつに任せよう」と、頼まなくとも得意で好きな仕事をこちらに回してくれます。

また、小さなことですが、私は以前、例えば「この会議をセットして下さい」といった簡単な依頼をアシスタントの方にすることを躊躇していました。「自分でやれば済むことなのに、他人にお願いするのは悪い気がする」と遠慮していたのです。しかし、とある忙しい日に、会議の参加者の時間調整に戸惑っている私を見かねた当時のチームメイトに、”Is this your job??” (それって、君がするべき仕事なの?)と聞かれて、ハッとしました。

よく考えてみれば私がしていたことは、適材適所で人材を配置しようとしている会社の意に全く削ぐわない行動です。会社は、会議の調整をやらせるために私を雇っているわけではないのです。

このことを理解してから、会議が必要だということになれば、私は躊躇せずにアシスタントの方に「議題・参加者・所要時間・緊急度合い」を箇条書きにしたメールを送るだけになりました。参加者同士の時間調整や会議室の予約などはプロのアシスタントの方にお任せして、自分はその会議のための根回しや資料作成などに少しでも多くの時間をかけるようにしています。

また、1日や1週間単位で自分の時間の使い方を振り返って、「今日は利益率の低い案件に時間をかけすぎたな」とか、「これは将来のビジネスの方向性に大きく影響を与えかねない重要案件だから、もっと人の助けを借りて時間をかけよう」などと、ROIの観点から常に微調整を重ねていくことも大事です。

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いかがでしたでしょうか。

一言でまとめると、賢く時間を使って、自分や同僚の強みを活かす形で仕事をしようということになるかと思います。

と、ほぼ自分に言い聞かせながら、来週も頑張ろうと思います(笑)。

Author: tomimunch

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